頭上いっぱいに広がる天の川は、まさに自然の神秘。肉眼でも見ることができますが、写真に撮るとより鮮明にその美しさを堪能できます。撮影に特別な機材が必要と思われるかもしれませんが、実は、天の川の撮り方は意外と簡単です。この記事では、初心者でも失敗しない撮り方のコツと機材を徹底解説します。
天の川の基本を押さえよう
天の川の撮影方法の前に、そもそも天の川の定義や観測するコツを押さえておきましょう。
天の川は銀河系の姿
天の川とは、私たちの住む太陽系を含む「銀河系」を地上から見た姿です。銀河系は直径約10万光年、厚さ約1,000光年の円盤状をした巨大な星系で約2,000億個の星々が集まっていると考えられています。夜空を見上げると天の川はぼんやりとした光の帯として見えますが、これは無数の星々が重なり合って見えているためです。
天の川は神話の舞台
夜空に輝く天の川は、その美しさゆえに神話の舞台としても多く登場します。例えばギリシャ神話では、英雄ヘラクレスが赤ん坊の時、ゼウスの妻ヘラの乳房を強く吸って飛び散った乳が天の川になった、ということです。そのため英語では天の川のことを「milky way」と呼びます。また日本でも、七夕でお馴染みの織姫と彦星の物語の中で、二人を隔てる存在として天の川が登場しますよ。
天の川の観測は山奥がおすすめ
綺麗な天の川を見るためには、街の明かりを遮ることができる山奥または陸地から遠く離れた離島が候補。離島よりは山奥の天文台やキャンプ場などが気軽に訪問できるため、観測スポットとしておすすめです。
天の川を綺麗に撮るための機材・設定
天の川の綺麗な撮影方法に必要な機材と設定をまとめてみました。
>>「初心者向け!撮影で使える便利なカメラ用語紹介【カメラ機材編】」
広角で明るいレンズ
天の川を撮影するためには、F値2.8以下にできる明るいレンズがおすすめです。もちろん、暗いレンズでも露光時間を長くする撮影方法もあります。しかし忘れてはいけないのが、地球が自転しているために星の位置は常に移動しているということ。露光時間が長すぎる場合、星が点ではなく線として撮影されてしまいます。同じ理由で、望遠レンズよりも広角レンズの方がおすすめです。
高感度耐性のカメラ
夜間の撮影ではカメラ本体の高感度耐性も重要です。ISO値を1600~6400程度まで上げることになるため、高感度ノイズが出ないようなカメラを選ぶ必要があります。センサーサイズはマイクロフォーサーズやAPS-Cよりはフルサイズですし、フルサイズとしてもなるべく高感度撮影ができるモデルを選びましょう。
三脚・レリーズ
夜空の撮り方では、露光時間が数秒~数十秒にもなるため手持ち撮影はあまり現実的ではありません。カメラをしっかりと固定でき、風などでも揺れにくい剛性を持った三脚を用意しましょう。
また、シャッターを押す時の振動にも気を配るために、レリーズを使ってシャッターを押しましょう。ちなみにレリーズを用意できない場合や忘れてしまった場合は、カメラのセルフタイマー機能を使う方法もあります。
撮影レシピ
天の川を含め、夜空を撮影するときには「500ルール」と呼ばれる法則があります。これは星が線として映らないための露光時間を算出するのに使われます。
- 500 ÷ 焦点距離(35mm換算)[mm]=限界露光時間 [秒]
例えば、20mmのレンズを使った場合は25秒以下、50mmであれば10秒以下の露光時間になります。
露光時間が決まれば、それに合わせてF値やISO感度を設定しましょう。一般的にはF値2.0~2.8、ISO感度1600~6400付近になるかと思います。
綺麗な天の川の写真を撮影するコツ
天の川や星空を撮影するための機材・レシピを確認したところで、より綺麗な撮影方法を押さえておきましょう。難しいように思えて意外に簡単ですよ。
>>「【冬だ!夜景の季節だ!】カメコンのカメラ女子向けおしゃれ写真紹介」
夏の撮影がおすすめ
天の川は季節を問わずに観測することができますが、冬よりも夏の方が濃くて綺麗な写真が撮影できます。これは地球が銀河系の端の方に存在し、日本(北半球)が夏の時に地球の夜側が銀河の中心を向くためです。夏は長期休暇などもあるため、天の川を撮影するには最適なシーズンといえるでしょう。
光害のない地域へ足を運ぶ
天の川は星座を作る天体や惑星と比べて暗い星の集まりです。そのため、街灯などの街の明かりや月の明かりが少しでもあると途端に見えにくくなってしまいます。都会周辺などの光害がある地域では、天の川を綺麗に撮影できません。山奥、海岸、離島など光が届かない場所で撮影しましょう。
ピント合わせはMF+ライブビュー
天の川や星は暗くて小さい被写体のため、オートフォーカス(AF)ではほとんどピントが合いません。そのため、マニュアルフォーカス(MF)でピントを合わせる撮り方が必要です。ピント合わせには、カメラのライブビュー機能を使うのがおすすめ。ライブビュー画面上で拡大表示しながらピントを合わせることができます。
露光時間は短めに
上記で露光時間の計算方法として、500ルールをご紹介しました。ここで計算されるのは露光時間の最大値です。あくまで目安として考えて、実際には高感度ノイズとの兼ね合いを考えながら可能な限り短い露光時間で撮影する方がよいでしょう。
現像で幻想的な写真に
天の川は美しい被写体ですが、撮影したままの写真では想像しているよりも地味な印象。より幻想的な写真に仕上げるためには、Raw現像作業が必要です。
設定する項目は主に以下の4点がポイントです。
- 色温度・彩度:星の光を好みの色合いに
- コントラスト:強めに設定して、天の川を強調
- ハイライト・シャドウ:ハイライトはマイナス、シャドウはプラスに補正
- 明瞭度・かすみ除去:クリアなはっきりした写真に
まとめ
天の川は誰でも簡単に撮影できる天体です。綺麗な撮影方法の一番のポイントは、光害の少ない場所選びと短い露光時間でした。また、撮影した写真を幻想的に現像する一手間も大切です。この記事で紹介した撮り方と機材をマスターすれば、感動的な天の川写真を撮影できますよ。ぜひ試してみてください。