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カメラマン 2021.10.06

プロカメラマン長沢慎一郎が語る作品の撮影エピソード〜小笠原の第二次世界大戦跡「濱江丸」〜

写真家長沢慎一郎の作品の解説と撮影ポイント、エピソードについてを本人が解説! 今回は小笠原に残っている第二次世界大戦の戦跡を撮影したときのエピソードを元に、カメラ初心者も参考にしたいポイントをお伝えします。

写真家長沢慎一郎が語る撮影秘話シリーズ。

長沢慎一郎氏本人が厳選した自身の作品を一枚紹介し、撮影にまつわる秘話や初心者にも参考になる撮影のコツを解説します。

第一弾の今回は小笠原に残っている第二次世界大戦の戦跡を撮影したときのエピソードです。

長沢慎一郎とは


長沢慎一郎は、日本の先住民として小笠原に住む「小笠原人」に密着した写真家です。

その他にも広告写真などの撮影も多く行っています。


長沢氏の代表作は自身がフィールドワークとしている、小笠原人に密着した写真集「The Bonin Islanders」http://www.akaaka.com/publishing/the-bonin-islanders.html

日本の先住民として小笠原に住む「小笠原人」に密着し、彼らのアイデンティティに迫っています。

2021年の5月には写真展も開催され、注目されている日本の写真家の一人です。


長沢慎一郎公式HP→ https://shinichiro-nagasawa.com/

今回の1枚:濱江丸(ひんこうまる)

写真は貨物船「濱江丸(ひんこうまる)」が米軍の魚雷により座礁したものです。

今は朽ち果てて魚たちの住処になり、シュノーケリングやダイビングのポイントになっています。

小笠原の戦跡の象徴的存在です。

写真の背景

小笠原諸島は第二次世界大戦時、硫黄島も近く激戦地となり、要塞地帯に指定されたため戦車や砲台などの軍施設が建築、配備されました。

戦時中、島民は日本本土に強制疎開されています。

戦後、米海軍の占領下となりましたが、米軍は旧日本軍の設備を使用できないようにしたものの、撤去は行いませんでした。

そのため、小笠原には今でも沢山の戦跡が残っています。

撮影方法

この写真でよく聞かれるのが、「どうやって撮影したの?空撮?」という質問です。


ほとんどの濱江丸の写真とは違う角度で撮影されていることと、浜とは逆側から撮影していることからだと思います。

カメラは4×5のフィルムカメラを使用しているのでドローンでの撮影も無理です。

「ヘリコプターをチャーターして...」

と答えたいところですが、もちろん違います。


小笠原では戦跡を回る「戦跡ツアー」というのがあり、私もそのツアーに参加し多くの戦跡を見て回りました。

濱江丸も浜から見ましたが、その時、浜から見て右側に断崖絶壁の岩山が見えたのです。


「あそこから見たら濱江丸はどう見えるだろう?是非見てみたい!」と思い、ガイドさんにあの岩山の頂上に行くことができるか尋ねたところ「道はないが行くことは出来る」ということで、行き方を教えてもらいました。

ワンポイントアドバイス:目線を変える!

同じ被写体でも少し目線を変えると、より写真が面白くなります。


今回も頂上に行くまでに危険な場所はありましたが、今まで見たことの無い濱江丸の撮影が出来ました。

この場所は夕方の光が特に綺麗で、ポートレートや他の風景も撮影しました。

とてもお気に入りの場所でしたが、残念ながら近年危険なため立ち入り禁止になってしまいました。

小笠原の撮影スポット

小笠原には、海に向かって作られた砲台も多くあります。

海に向かう砲台の入り口は、山の反対側にあることが多いです。

入り口から砲台まではトンネルで真っ暗です。

遥か先に光が見える程度。

背中にカメラバックを背負い、片手に三脚、頭にヘッドライトをつけトンネルに入っていきます。

これが結構度胸が必要です。

ワンポイントアドバイス:マジックアワー

撮影ではマジックアワーという時間が1日2回あります。

明るくなってきて日の出まで、夕方日没から暗くなるまでの時間帯です。

この時間帯は本当に光が綺麗で撮影に適しています。


私も大体夕方は暗くなる直前まで撮影しますが、この日もマジックアワーでの撮影を終了し、慌てて帰宅し始めました。

真っ暗なトンネルをヘッドライトで照らしながら無心で歩いていると、突然辺りは真っ暗に!

ヘッドライトが消え、電源に触っても反応がありません。

・・・なんでこんな時に!と思いましたが、そういえばもう一つペンライトがあったのを思いだし、なんとか探して帰ることが出来ました。


マジックアワーでの撮影は魅力的な写真が撮れますが、夕方のマジックアワーの後は暗くなるため、準備も怠らないようにしましょう!

まとめ

今回は小笠原に残っている第二次世界大戦の戦跡「濱江丸」の撮影エピソードを聞かせていただきました。


なかなか日常の撮影では出会えない体験ですが、意外な場所から撮影してみたり、撮影後の注意点などは、カメラ初心者もぜひ覚えておいて欲しいところです。


長沢氏の撮影ポイントは今は立入禁止となってしまっているそうですが、自分なりの撮影場所を見つけて撮影するのも楽しそうですね。

濱江丸のある小笠原諸島の父島へは竹芝桟橋から船で24時間。

安心して旅行にいけるようになったら撮影に行きたい場所の候補にぜひ加えてみてくださいね!


小笠原の戦跡ツアーの詳細はこちら

小笠原村観光協会HP>戦跡ツアー


長沢慎一郎についてはこちらの記事でも紹介しています。

写真集の写真撮影時の撮影秘話も満載ですのでぜひ御覧ください。

先住民としての「小笠原人」に密着した注目のフォトグラファー長沢慎一郎